老化・アンチエージングの研究の進捗状況を知りたければ、入門書としてこの本をお薦めしたい。
1995年オランダ生まれ、コペンハーゲン大学の分子生物学博士課程に在籍する若手の研究家(出版時点)だけど、デンマークでベストセラーになるや、あっという間に世界22ヶ国以上で翻訳されたという。
実際、読んでみると、医学・科学系の知識は当たり前として、その幅広い知識、情報収集能力には圧倒された。プロローグに記してあった、20世紀初頭、サルの睾丸の小片を移植することで長寿が期待できると実践した医者、そしてそれが金持ちやセレブに受けて需要が上昇していったという話からして、ぐんぐん惹き込まれ始めて読むのをやめられなくなった。
390年も生きるサメや若返りのチャンピオンともいうべきベニクラゲから、ハダカデバネズミ、1000年以上も枯れないで成長し続ける樹木まで、それが何故かと探っていく。もちろん、長寿と言われている地域、長寿遺伝子を持つ人々がいるというアメリカはインデアナ州の小さな町にまで足を運ぶ。
もちろん、遺伝子研究とか医学・生物学他の老化・長寿の現在までの研究、途上の失敗とかも含めてフィールドは幅広い。「老化はプログラムされている」けど、それはどういうシステムになっているのか、それを打破する方法、研究はどこまで進んでいるかとか、丁寧に教えてくれる。
細胞のゾンビ化、アポトーシス(細胞の自殺)、オートファジー(自食作用)から、細胞の死にかかわるテロメラの短縮はとめられないのか、ノーベル賞を受賞した中山教授のips細胞の可能性(これは、京都大学ps研究所・国際広報室編『ips細胞の研究』(東京書籍刊)に詳しい)とか、様々な角度から現在の研究状況を知ることが出来るのだ。先は長いけど、光はさしているのかもとの期待は持たせてくれる(人間の寿命は150年、それも老化しない身体を獲得してなんて話も出てきている。そのあたりは、デビット・A・シンクレア、マシュー・D・らブラント著、梶山あゆみ訳『LIFESPAN(ライフスパン)老いなき世界』(東洋経済新報社刊)に詳しく書いてあるし、他にも類似の本が続々出版され始めている)、
抗酸化作用のあるサプリが逆に命を縮める可能性もあるとか、メルホルミン(糖尿病の薬)、アルギオチンミンZ(高血圧を抑える薬)とかの作用、アルツハイマー、ピロリ菌、HIV、癌などとの関係も記されていて、すごく参考になる。
ホルミシス(身体が受けるストレス)が長寿にどのくらい役立つのかも参考になる。運動はもちろん、断食、そして献血についてなんかは「へえっ」て思ったものだ。
エピローグには、こんなことも書いてあった。「老化の研究はまだ始まったばかりだが、これまで見てきたように、すでに多くの重要な進歩があった」「医学の進歩が続けば、いずれは老化を克服できるはずだ。問題は、いつそうなるか、である」
最後に、これはよく言われていることではあるけど、第24章「物質より心」から引用させてもらうことにする。
「健康な食事、運動、新たな生活スタイルは、あなたを大きく前進させるだろう。だがそれだけでは、ゴールにたどり着けない」「長寿の人々は意義と目的について意識が高く、いくつになっても熱心に社会参加しているということだ」〈「毎日日曜日に孫のために料理をする」とか、「毎日階段を掃除する」といったささやかなものであったとしても〉
「実年齢より若い気でいる人の方が長生きしやすいことを複数の研究が示している」とも。